往きの飛行機から偶然映っていた”ムン島”
２００６年からスタートしたベトナムの生活もノベ６年を向かえました。その間、不況の声は途絶えることなく２０１２年に入ると遂に会社が事業撤退を発表。夏にはベトナムの工場をたたんで帰国することになりました。人員削減、経費節減、省エネあらゆる対策を強いてムダを省いても、活路を見い出すどころか、ただの防戦一方で体力も活力もどんどん失っていく中、そんなキナ臭い情報が小出しに伝わってきていたので、正式な発表をきいた時に感じたのは、驚きでも怒りでも悲しみでもなく、なんともいえない虚脱感と後味の悪さでした。店終いのための壮絶な後処理を控えていた４月のこと、
同僚の”Bさん”と”Kちゃん”夫妻の最後のベトナム思い出作りに便乗して、ベトナム屈指のリゾート地”ニャチャン”に同行させてもらうことになりました。
ニャチャンはベトナムの南、ホーチミンの手前にある海沿いの小さな街です。小島が点在して古くから港町として開け、外国人の避暑地としての歴史も長いようで、洋風の豪華なホテルと南国らしい解放的なビーチが広がっていて、ベトナムで最も有名なリゾート地です。
実は、ニャチャンにいくのはこれで２回目で、１回目は前の年にベトナム人スタッフに連れていってもらいましたが、常夏と聞いていたニャチャンがプールにも入れない寒さで、雨風で透明度の高い綺麗な海も遂に見れないままでした。その代わりリゾート気分は存分に味わえたので、それはそれで楽しい旅の思い出です。
そういうわけで、今回の旅の一番の目的はただ一つ。もう見ることはないだろうとあきらめていた熱帯魚のふるさと、南国ベトナムの海の実力を確かめることです。未だかつて沖縄でも体験できていない、どこまでも続く珊瑚礁
、いわゆるサンゴ畑をカメラに納めることです。
南国にふさわしい空。今回は期待できます 。 田んぼが海中に？と思ったら塩田らしいです。 不自然な海の色ですが、これが正解？
急な仕事で休みが流れないかとビクビクでしたが、すんなり出発当日をむかえました。今回は二人のチョイスで飛行機はなんと”ビジネス”クラスです。普段の旅なら、そんなところにお金を回そうと考えたこともありませんでしたが、なるほど、ビジネスともなれば搭乗までの間、食べ放題、飲み放題の専用待合室でまったり・ゆったりできるので、なにかと落ち着かない海外旅行にはもってこいです。ベトナム航空のビジネスは日本ほどお金がかからないので結果
的にはお得かもしれません。
幸い天候に恵まれ、綿雲の浮かぶ抜けるような青い空が向かえてくれました。眼下にはミニチュアのジオラマが広がり、南国特有の海の色が海岸沿いに目立ち始め、遂に絵の具を溶かしこんだような不自然な青白い海が近づいてくるとそこがニャチャンです。
近代的なデザインのシェラトン 豪華ではないけど、シャレオツな室内 ベランダからの眺め。海に浮かぶビンパール。
ニャチャンの空港からまっすぐタクシーでホテルへ。ハノイでもおなじみのマイリン・タクシーですが、こっちはメーターの上がりが３割増しです。最初はボッタクリかとおもいましたがリゾート価格のようで、旅行気分に水をささないようにここは見て見ぬ ふり。１時間近く走って市街の一等地にあるシェラトン・ホテルへ。ベランダはオーシャンビューで、ニャチャンの代名詞でもある長さ８Kmの”ニャチャン・ビーチ”と、海に浮かぶリゾート島”ビンパール”が一望できます。荷物を置いてひと休みしたら、肩慣らしに”ビンパール”にいってみることに。
ロープウェイでビンパール上陸。 やっと探し当てた水族館。 動く水中トンネル。けっこう本格的です。
ビンパールは島全体がリゾートホテルになっていて、巨大なプールやプライベートビーチはもちろん、遊園地や水族館、ウォーターワールド、ウォーターミュージアムといった施設まで併設され、ちょっとローカルな一大アミューズメントパークとなっています。ホテルの滞在者はもちろん顔パスで、外来の観光客も入館料を払えば利用することができます。それからもう一つビンパールの名物といえば島と対岸を繋ぐロープウェイで、ウソかホントか世界一の長さだそうで、ニャチャンの人気の観光地となっており、乗り場は長蛇の列でした。おかげで島に渡った頃には日も結構傾いてしまいました。ここはウォーターワールドで遊んで水着でブラブラするがいいのですが、時間も用意もないので、とりあえずそのままブラブラ水族館を目指します。
水族館はやや小ぶりで、魚もおなじみのものばかりですが、ここのオーナーが趣味で作った私設の水族館を無料開放しているそうで、そう思うとなかなか立派でした。
ホテルに帰り食事を済ませまると、いよいよここからが勝負です。明日は日程からいっても、お目当てのサンゴ畑の日で、例え反対されても一人でもいく覚悟でしたが、あっさり二人ともつきあってくれました。てっきり珊瑚なんぞ興味なしでホテルでゴロゴロだと思っていたので意外でした。数少ない情報（地球の歩き方）では珊瑚を見るためには沖に行かないといけないようです。海に出るには船を手配する必要があり、その大役は当然のごとくこちらに回ってきました。もちろん自らかってでます。ニャチャンでは島めぐりツアーというのが有名らしく、島のきれいなビーチで日光浴やシュノーケルを楽しめるとのことで、当然シェラトンのツアーガイドでも予約できるだろうとタカをくくっていたところ、今はやっていないという冷たい一言。今日中になんとか船の予約をとりつけないと翌日ぼんやりひなたぼっこで終わる可能性大です。あせって夜の町に船を探しにいくことに。タクシーで目についた観光案内所に飛び込みました。ローカル色まんまんですが幸い自然大好き西洋人相手のツアーの充実した案内所でした。紹介カタログとアルバムを交互に眺め、どうやらムン島という島が海がきれいでシュノーケリングを一番楽しめることをつきとめました。でも、島めぐりツアーはだいたい３、４島を回って帰ってくるのしかなく、朝の７時出発で、帰着が１６時。いろんなイベント盛り沢山で料金が１０ドル以下というのは超リーズナブルです。最悪それでも良かったのですが、念のためタクシーで待っている二人に出発時刻と告げると分かりやすいリアクションが。まあ丸一日つぶれるのもかったるいし、ノリの違う連中との団体行動も疲れそうなので、ここは一つ金にものをいわせてムン島だけにいく高速艇をチャーターできないか交渉しました。すると料金は１００ドル強ぐらい。それで好きな時間に出発できて、好きな時間に帰ってこれるのなら十分でしょう。
人と荷物で賑わう船着き場 当然のように港もきれいな海の色 ♪どうしたんだ、ヘヘイ、ベイビッ！
翌朝、ゆっっくりしてから、昨日の観光案内所へ。そこからスタッフと船着き場に向かいボートを待ちました。港は船に乗り込む人や運び込む荷物で活気があり、ローカルなアジアの雰囲気がいい感じです。２０人乗りぐらいの木造のポンポン船がひっきりなしに停泊しツアー客がどんどん乗り込んでいきます。お待ちかねの高速艇は５〜６人乗りぐらいの今風のシャレたボートで、ツアー客の前でちょっとした優越感に。ところがイザ出発の段でウンともスンともいわなくなってしまいました。エンジンを直そうと、たっぷり１時間近く船着き場の前で漂流し、沢山のツアー客の前でさらしものになった後、ついに修理をあきらめたスタッフから別 の船に乗り換えるように指示されました。近づいてきた船は高速艇ながらオシャレ度はワンランクダウン。目的地のムン島は島めぐりツアーの中でも一番遠い島ですが、高速艇が跳ねるように進んで３０分ぐらいで到着しました。船はムン島の船着き場のビーチから少し外れた１００mほど沖の方に停まり、ここから泳げといいます。さっそく準備をしていたら、自前の水中メガネが壊れていて、しかたなくレンタルのシュノーケル用のメガネを使うことにしました。水深は５mほどで鮮やかな青い色をしていますが海底は見通 せません。おっかなびっくり海に入ると結構冷たく深く感じます。中を覗くと海底が青白くてボンヤリしています。ウニがあちこちに散らばっていて、珊瑚はありますがところどころ点在する程度で期待したほどではありません。
ムン島沖。深くて冷た〜い。 海底は青くて、珊瑚がよく見えない。 これだけ多いとビビリます。
船の目線から、一気に海面の目線になると心細く感じます。それに借りたシュノーケルは水中眼鏡が鼻を密閉するタイプで水中でも水上でもシュノーケルの細い管からしか呼吸ができず息苦しいので、船の周りをチョロチョロと泳いでいました。ふと気付くとすぐ側に魚の壁があってギョッっとしました。水中で音も動きもないので気がつきませんでしたが、海底まで覆い尽くすほどの大群がちょっと手を延ばせば届きそうな距離にいます。それらが一斉にこちらをジッと見ていて、こちらの動きに合わせて一定の距離をおいて漂っているのがわかりました。手の平サイズの大人しそうな魚ですがこれだけの数の視線を感じると何やら恐ろしく、ただ遠巻きに写
真を撮ることしかできませんでした。弱い魚が集まっても天敵に見つかり易くなるだけだろうと思っていましたが、そうでもないみたいです。そのうち波も荒くなってきて息も続かなくなってきました。口の中に海水も入ってきて呼吸を整えるのも難しくなり急いで船にもどりました。ところが船のランクが落ちたせいで、船によじ登るハシゴがなく、うまく取りつけません。なんとか捕まえてよじ登ろうとしますが、もう体力を使い果
たしていて、なかなか船に這い上がることができなくなっていました。
船の上でへばっていると、船長がもっと岸の方へ行かないときれいじゃないといいます。珊瑚を汚してしまわないように離れて停めているようです。今度は救命ジャケットを借りて再び海へ。シュノーケルの息苦しさを何とか我慢して、船からどんどん離れていくと、急に水温が暖かくなってきて、海の中が明るくなってきました。水深が浅くなって光が海底に届くようになってきたのでしょう。小ぶりだった珊瑚が徐々に大きく、密度も増えてきました。
そして遂に・・・・、
そう、こういう景色がみたかった。 見渡す限り続くサンゴ畑。 まるでサンゴのＩＴ革命や〜。（彦摩呂）
透明度が一気に上がり、太陽の日射しが水面のゆらめきでユラユラと珊瑚を照らしています。海底は珊瑚達で埋め尽くされ、折り重なって膨れ上がり、見渡す限り遥か先まで広がっているのでした。これこそ夢のサンゴ畑です。ショップではまず見られない骨太な枝サンゴや、一徹でもひっくり返せないような巨大なテーブルサンゴがヒシメキあっています。ハードコーラルと呼ばれる特にきれいな水と強い光を好む珊瑚達の天国でした。息苦しさもＭａｘで体力も底をつきかけていましたが、夢中で写 真を撮りまくりです。既にボートから遠く離れていて、この状態ではとても引き返すことができないと思い、そのまま進んで岸に泳ぎつくことにしました。水深はどんどん浅く、珊瑚はどんどん近くなってきて、今にも足にあたりそうです。と急に珊瑚が減ったかと思ったら、変な力に体が不自然に引っ張られました。気がつくとそこはもう海岸の岩場です。珊瑚は海岸に打ち付ける波のすぐ手前まで群生していたのでした。素手と裸足で波が打ち付ける岩場に取りつくのは大変で、何とか這い上がったときには、腕は傷だらけで、足の裏は血が出ていました。
枝サンゴの枝の密度が尋常じゃありません。 ねっころがれそうな大テーブルサンゴ。
サンゴ畑は海岸の目と鼻の先です。
岩場で息を整えて、今度はシュノーケルを外して船に戻りました。途中何回か足がツッて船の上ではグッタリ。さっき切った足もジンジン痛くて、おまけに日焼けで腕はピリピリと痛み出していました。毎度のことながら念入りに塗ったサンオイルもぜんぜん効果 がありません。すでにモロモロのダメージと目的を果たした達成感で、”早く丘に上がりたい”モードになっていました。こっちが岸まで泳いできた間、船上で十分休憩していたBさん、Kちゃんがようやく海へ。それを見ているうちに、生来のもったいない病がでてきて、せっかくあこがれのサンゴ畑に来たのだからと、気力を振り絞ってもう一度。
枝の先端が妖しく光る珊瑚たち 写真では映りませんが蛍光色です。 最後にまた魚の群れ。
今度もシュノーケルを外して海へ。連続では潜れませんがずっと楽です。広大なサンゴ畑ですが、それが目立つのか魚の数は意外に少なく感じました。もっと枝の間をカラフルな魚が群れているとよかったのですが。数としてはチョウチョウウオが一番多かったようです。白や黄色のペアがあちらこちらからよぎっていきますが、とてもカメラで追いきれません。また、ハギの仲間も多く、珊瑚の上で堂々とホンソメワケベラにクリーニングしてもらっていました。水深の浅いところは太陽の光が強くて気付きませんが、少し深くなるとサンゴの先端が黄緑色の蛍光色で妖しく光っているのがわかります。他にも赤や青のサンゴがあって、きっと水槽に入れて近くで見れば、もっと神秘的な色をみせてくれたことでしょう。
いよいよ気力も電池切れとなって、えっ、もういいの？という風な顔の船長に頼んで、ムン島に上陸することにしました。
ムン島のビーチ、かなり暑い。 清涼感のある海の色。 まだ居たいような、早く帰りたいような。
ムン島の船着き場は浅瀬のビーチになっていて、海は輝くようなクリアな色をしています。どういう理由でこんなに色が違うのかいつも不思議です。海底は砂底でも、海の上はゴツゴツした石だらけで砂浜がほとんどなく、リゾート感が出ないので、島めぐりツアーでは長居はしないようです。それでも陸は沢山のお客で賑わっていました。上陸するには入場料がかかりますが、それどころではない人の多さのようです。丘はすごい暑さで、水着もきてない観光客が食堂や日影のよい場所を占領し、周りは料理の食べ残しが散乱して生ぐさい臭いが充満していました。休憩所の外れの小さな日傘を見つけて避難しましたが、できた日影は細すぎて何の役にも立ちません。さっきの海で日焼けした肌はそろそろ日射しの直撃に耐えられなくなっていて、せっかくの透明な浅瀬も潜りたくてもＴシャツを脱ぐことができず、足を濡らすので精一杯でした。暑さと臭さとヒリヒリで、早々にムン島を引き上げ帰路につくことにしました。まだ日の高い時刻で、ムン島には実質２時間ぐらいしかいなかったことになります。後で知ったのですが、本当はムン島の周りには他にも何ケ所か見どころポイントがあったようです。日焼けさえなかったらと思うとちょっと残念。
店先に並ぶタツノオトシゴ達。 変わり果てた仲間を寂し気に見つめる・・の図。
船着き場に戻ってきて、濡れた水着の上からタオルを腰でまいて涼しいタクシーに乗り込むとホッとしました。その帰り道、前々から気になっていた海沿いの通 りでタクシーを停めてもらいました。車の窓越しに運ちゃんとBさん、Kちゃんの３人の冷ややかな視線を感じながら道路を渡ると、そこには何軒も店が並んでいます。そしてそれぞれの店の前には行き交う車の目につくように水槽が置かれてありました。ここは空港やビンパールからニャチャンの町への道すがら必ず通 るところで、もはや疑いようもありませんでしたが、その水槽の中には、数え切れないほどの 生きたタツノオトシゴが入っています。１つの水槽に軽く５０〜６０匹はいるでしょうか。無造作な水だけの水槽は”生け簀”であり、明らかに観賞以外の目的です。その横にはガラスケースにカラカラに天日干しされたタツノオトシゴが一匹一匹ズラリと並べてあります。たぶん中国なんかで有名な漢方の薬の材料なんでしょう。そのとなりのここベトナムも影響を受けている可能性は高いです。この通 りだけで数千匹の犠牲がでていると思われます。まったく、こんなに大人しくて、ニモにも匹敵する海のアイドルになんという仕打ちでしょうか。群れる生き物ではなく、日本のショップにはなかなか入荷してこないこともあるというのに・・・。思わず全部買い占めて、目の前の海に逃がしてやろうかとも考えましたが、それで味をしめて乱獲に拍車がかかっては困るので、ここはシッポをまいて立ち去ることにしました。タツノオトシゴを煎じるよりもっと安くていい薬の開発方法を考えながらタクシーへ戻りました。
朝から背中が炎上中のBさん（すみません）。 賑わうプライベートビーチ。 明日がチェックアウトならいいのに・・・・。
翌朝はもう最終日。朝食になかなか出てこないBさんの部屋へいくと、日焼けが悪化して服も着れず、ベットの上でハムのように身動きが取れなくなっています。昨日「むしろ、焼きたいから」とサンオイルもしないドＭ行為がアダとなったのでした。その日も朝から照りつけるような青空で、目の前のニャチャンビーチは穏やかで驚くほど碧く透き徹っていました。Bさん程ではないにせよ日焼けで太陽の下にでるのがキビシイ状況でしたが、それでも飛び込みたくなるほどの魅力的なコンディションです。あと１日あったらと波打ち際でうなだれました。そのとなりでは白人女性が、日傘もささず砂に寝っ転がって体を焼いています。紫外線に弱いから白い肌なのかと思ったら、全く逆で白人ほど日光浴好きで頑丈な肌の持ち主はいないでしょう。
チェックアウトは午前中で、夕方の飛行機まで時間があるので、ホテルに荷物を預けて、どこか観光地へ足を延ばすことにしました。ニャチャンからタクシーで１時間ぐらいのところにモンキーアイランドがあり、海もきれいというのでいってみることにしました。
モンキーアイランド途中の絶景。 のどかすぎる船着き場。 おだやか〜な海を進みます。
モンキーアイランドはニャチャンから北へタクシーで１時間ほどいって、船でさらに２０分ほどの海を渡った島にあります。近代的なニャチャンの町並みから急に素朴な漁村の風景に早変わりすると、時間もゆっくり流れ出します。静かで美しい海岸線を見ているとなんだかタイムスリップして遠い秘境にたどり着いたよう。人のまばらな船着き場には、モンキーアイランドの他にもいろいろな島へ渡れるようで、海水浴、パラセーリングやゴーカート、島めぐりのツアーもあるようです。特にスキューバーダイビングはメッカのようでどぎつい色の珊瑚の看板がデカデカと飾ってありました。タクシーの運ちゃんは待っているから帰りも乗ってけとホクホクした顔でいいます。海は養殖などの生活感が漂う淀んだ色でした。ポンポン船に乗り込むとこんなに凪いだ海なのに座席の下にはリバースの跡。その隣には片目を開けて死んでいる（ように眠る）おっちゃん・・・。
省人化のすすんだモンキーアイランド。 汗一つかかないお猿。 絶景ポイントをもとめて放浪中。
ほどなく上陸したモンキーアイランドは３０分で１周できるほどの小さな島でした。降り場のそばに砂浜のビーチがありましたが人の姿はほとんどありません。海は青白く濁っていて浅い桟橋でも底を見通
せないほどでした。ニャチャンビーチを上回る海を期待しただけに残念です。島の中に入ると、なるほど日本ザルに近い感じのお猿が数十匹ほど放し飼いになっています。観光客を襲わないように地面
には一面にエサがばらまかれていました。一見大人しそうなお猿ですが、自分の背丈と同じ１〜２才の小さな子供に対しては対抗心ムキ出しで、親がよそ見をしている隙に飛びかからんばかりに威嚇していて見ていてハラハラします。
照りつける日射しが直接皮膚をジリジリと焼く音が聞こえそう。それどころかTシャツ越しに肌が攻撃されているのが分かります。どＭのBさんはカバンどころかTシャツにすら肌にあたるのが痛くらしくロボットのようにしか動けません。そんなふさぎ込んだBさんを問答無用で炎天下に連れ回し、海の絶景ポイントを探して精力的に動き回っている（どＳな？）Kちゃん・・・・相性バツグンのいいカップルです。
透明度がイマイチな島のビーチ。 島の裏のダイビングスポット。 珊瑚の残骸がゴロゴロと。
島の反対側に着いて木陰のベンチで休んでいると、海の方からにぎやかな声がして、ウェットスーツを着た若い連中が海から続々と上がってきました。よく見ると近くの小さな小屋にウエットスーツがぶら下がっていて、船着き場で見たあのどぎつい珊瑚の看板が飾ってあります。してみるとここはダイビングのメッカ、珊瑚の楽園のようです。海岸にいってみると、ゴロゴロした大石ばかりでボートもなにもありません。そのまま海に入ればすぐそこに珊瑚が見られるのでしょう。海は外海に面
しているのか波が荒く、相変わらず薄汚れた色で何もみえません。本当に珊瑚の楽園なのか、ベトナムお得意のハッタリでは？そう思って石に腰を降ろすと、足下にはドッチボールほどの立派な珊瑚の骨格がいくつもころがっています。今日はたまたま海の調子が悪かったのかもしれません。もし、そうならビーチで遊べて珊瑚も見れる理想的な島だったことでしょう。
どんなにリゾート地でも、どんなに遠い旅の空でも、しょせんベトナムはベトナム。日中に外を歩き回るのは無謀以外のなにものでもありません。ビーチで貝殻をあさるKちゃんを横目に、ポンコツ男二人は遂に沈黙。海の向こうからのお迎えをひたすら待ちわびるのでした。
全長８Kmのニャチャンビーチ
シェラトンに舞い戻り、客のいない昼下がりのレストランに居座って、夕方のフライトまで時間を潰すことにしました。レストランのガラス貼りから見えるニャチャンビーチは今朝とはうって変わって、風は強く波は荒れ海は青黒く映っています。それを見ていると、一度いったぐらいで、どこの海がきれいだ、きたないだと決めつけているけれど、もしきれいじゃないとしたら、海のせいじゃなく自分の行いが悪いだけなんじゃないか？とあたたかいカフェラテを飲みながらぼんやりと考えたのでした。
送迎タクシーの時間が近づいて、辺りが赤く染まってくると、あんなに痛めつけられた太陽に、別
れを告げるのが少し名残り惜しく感じられた今回の旅でした。
おわり