ニャチャンの旅から３ヶ月後の８月初旬、ベトナム生活の期限はあと２ヶ月を切っていましたが、工場の建屋の修復やら設備の移設、撤去を間近に控え、かたや店じまいのお祭りムードとはウラハラに、異様な緊張感につつまれていました。そんな折、Kちゃんサイドから、再度ベトナム旅行のお誘いが舞い込んできました。拒絶感のあったベトナムも、前回のニャチャンの海の風景に味をしめたようで、限りあるBさんの滞在期間中に、も一つベトナムリゾートを満喫しておきたいみたいです。今度はハノイの近場のリゾート都市として定着してきたダナンに的をしぼることになりました。すると、急に当番制ということになって、ホテルやベトナム国内線の手配を押し付けられてしまいました。のっけから思いがけずドSの洗礼を受けてしまい、ドN（ノーマル）の自分にとっては結構なダメージです。とはいえ一人では決していこうと思わないベトナムの海に再度いける願ってもないチャンス。さっそく頼りない地元の旅行代理店で予約手続きしました。例によって国内線はビジネスクラスです。
早めにとった夏休みに旅行をぶつけました。不思議と仕事はトラブルに巻き込まれることもなく、すんなりと夏休みを向かえ、当日は、これまたいい天気に恵まれました。空港のビジネスクラス用のラウンジでまったり旅の計画を練り、搭乗口は専用バスでゆったり。
ダナンはハノイとホーチミンの中間地点、ちょうどベトナムの真ん中にあり、飛行機で時間にして６０分前後です。近くにはホイアンやフエといった古い観光街や遺跡があって、１０年以上も前からリゾート地としての開発がどんどんすすめられているベトナム中部における最大の都市です。ここも１年前の冬に来て以来、二度目の訪問になります。そのときは、寒くて海はもちろん、プールにも入れず、近場にシュノーケリングができる場所があるとは思ってもみませんでした。
スイスベルホテルのフロントにて。 部屋のベランダときれいな庭の景色。 雰囲気のある長〜いプール。
空港からタクシーで１時間ほどの海沿いにあるスイスベルホテルへ直行しました。緑に囲まれた広い敷地内にコテージのように宿泊棟が点在し、大きなプールとテニスコートなどのレジャー私設が揃い、もちろん、目の前の海には敷地の端から端まで砂浜のプライベ−トビーチが続いています。以前いったことのあるプラムホテルやダイヤモンドヘッドホテルなどもそうでしたが、こいったコテージ形式のホテルは欧米人向けの滞在型ホテルの典型的なスタイルのようです。
延々と続く砂浜のビーチ。 目の前にチャム島を臨む。
チェアに敷くタオルは借りれます。
部屋で一息ついたら、すぐにフロントにいって翌日のシュノーケリングとエステの予約をします。ここはニャチャンとちがって、周辺はリゾートホテル以外なにもないのでフロントで受け付けてくれないと面
倒なことになります。が、幸い無事に予約完了。離島のシュノーケリングツアーで朝から夕方まででしたが、前回難色を示した二人もどういわけか、すんなり参加ＯＫでした。
昼は、目の前のプライベートビーチへ。砂浜は相変わらず容赦なく照りつける太陽でせっかくの無料のビーチチェアもパラソルも役に立ちませんでしたが、今回、Kちゃんから水に強い強力な日焼け止めクリームを贈られたので、前回のように日焼けに悩むこともありませんでした。海は胸の深さの遠浅で、透明度は今一つですが、深い緑のグラデーションが沖まで鮮やかに広がっていました。海底は見えず、サンゴらしきものは見通
せず。海水に疲れたら隣のプールへ。横長で１００mはあろうかという長さで、消毒剤の臭いがツンときますが、真水に入るとリフレッシュできます。
オシャレなホイアンの夜。 ベトナムシルクを買い漁り。 ホイアンの三大名物。不評・・・。
夜は、せっかくなのでダナンの観光地ホイアンにいってみます。ホイアンは世界遺産で古き良きベトナムの街並みが残る小さな街です。夜のホイアンは提灯がならび、ほどよくライトアップされ、欧米人向けのカフェやバーもあって賑わっています。ブラブラと散歩しながら、お土産屋を物色していると、商魂たくましいおばちゃん達に購買魂に火をつけられて、ベトナムシルクをしこたま買込みました。それでもまだ買わせようとするおばちゃん達には脱帽です。
イケメンスタッフ。 シュノーケリングへ出発。 ダイナミックな海底。
翌朝はイケメンお兄さんのお迎えのバスにのって船着き場へ。船着き場は沢山の船とお客とスタッフで賑わっていました。ほとんどが西洋人です。２０人乗りぐらいの木製のローカルな船に乗り込んで、鼻先の沖に浮かぶチャム島へ向かいました。チャム島は昔から海軍が管理し、渡島が制限されていたらしく、小さな漁村があるだけで手付かずの自然がのこっているのだとか。現在もダイビングツアー以外で外国人が渡島するのは規制されているようです。
甲板は西洋人の家族連れが４〜５組ほど。身体をあたためる超甘いコーヒーと水は飲み放題でした。トイレも完備です。出発して１時間ほどで、黒い岩肌で囲まれた小島につきました。島のまわりの海の色は濃く、いかにも沖の海といった感じです。甲板が騒がしくなり、最初に１ケ所に集められ、ガイドのおねいさんの簡単な説明の後、すぐにシュノーケリングが始まりました。女性も子供も、慣れた感じで臆することなくどんどん波の荒そうな海へ飛び込んでいきます。こちらは初めての沖合いシュノーケリングにおっかなびっくりで、最後尾で慎重にまわりの様子をうかがいました。皆、お決まりのシュノーケルと鼻の塞がった水中メガネ、足ヒレをつけて、救命具や浮き輪を使う人は一人もいません。海は間違いなく足のつかない深さだろうし、これは相当な熟練者のグループにいれられてしまったとアタフタしていると、半分ぐらいの人が海に入る前にガイドさんから弁当箱のような小さな袋をもらっているのに気がつきました。それは５００mLの空のペットボトルが２つ入った袋カバーで浮き輪の代わりなのでした。大きさといい構造といい、なんだかやっつけみたいな浮きですが、少し安心して海に入る準備をしました。前回のニャチャンの経験を活かし、シュノーケルなし、水中メガネは持参したメガネタイプ。足ヒレと浮きは借りて海に飛び込みました。思いのほか、身体が深く沈んで、一瞬、四方を暗い青に取り囲まれてしまいました。案の定、海は深く底は見えません。ゆっくり身体が浮いて水面
に頭がでると、ガイドさんの説明の通り、皆についてまっすぐ島の方へ進んでいきました。さっきの浮きが効いているのか、水中メガネを変えたからか、足ヒレがあるからか、浮かぶのは苦になりません。浮きは小さくて不安でしたが、なるほど、泳ぐのに邪魔にならず、片手に持ったり、胸に抱えたり、頭に敷いたりと便利です。島に向かって泳ぐうちに徐々にゴツゴツしたダイナミックな岩の海底が見え始めました。
名前どころか、固いか柔らかいかさえわかりませんが、大きなハードコーラルやソフトコーラルがところどころに・・・・。
海の透明度はそれほどで、５mほどの底は青く見通せないほど。沖の磯らしく、岸の直前まで起伏の激しい岩場です。波は少しありますが、流れがさほどないので、ヒレをつけていれば進むのに苦はありませんでした。ときどき、息継ぎに顔をあげなければいけませんが前回よりも疲れません。着実に進歩しています。海の中は一面 のサンゴ畑という光景はありませんが、荒涼とした岩場のところどころに立派なハードコーラルや巨大なソフトコーラルなどいろいろなサンゴを見ることができました。
アミチョウチョウウオのカップル？ 細長いヤガラもいやがら。 コバルトの群れ。
下に夢中になっていると、いつの間にか岸のそばにいて、波に揉まれて岩にぶつかったり、引っ掻かれたり、毒のありそうなイソギンチャク？から離れようとして足がツッてしまったり。魚は、コバルト、オヤビッチャ、フェアリーラス、チョウチョウ、ツノダシ、ハギ、ヤガラ、ウニ、青ヒトデなど、代表的な面 々です。群れは少なく、２〜３m先をチョロチョロと逃げ回るので、ひと昔前のカメラではとても追いきれません。そろそろ買い替え時です。欲求不満なので、浅瀬の岩の上で日光浴をしていたヤドカリを捕まえました。ベニワモンか、ユビワサンゴヤドカリか。あとで船の上でじっくり見ようと手に握っていたのですが、手の中で思うように動けずに、遂にイライラが爆発したヤドカリに思いきり指を挟まれて逃げられてしまいました。
ガイドさんとツーショット。近いのは波のせい。 船からのダイブ遊び。 ジャングルのような休憩所。
シュノーケリングポイントは島のまわりの２ケ所。２００mほど泳いだ先で、先回りした船に回収されます。ヒレを借りなかったBさんは、皆に追いつけず、１回目のシュノーケリングで体力を使い果 たし早々にダウン。あいかわらずのドMぶりです。子供達は早々に飽きたのか、本命がこっちだったのか船の上から海へのダイブに夢中になっていました。皆早々に船に引き上げる中、Kちゃんと二人、最後までシュノーケリングを楽しんだのでした。
小舟で上陸。 海を眺めながらハンモックで。 遠浅のビーチ。
昼前にはシュノーケリングも終了、その後、船は魚村訪問グループとビーチ休憩グループに別 れました。休憩グループは一足先に、ヤシの木の生茂る砂浜に上陸。そこは休憩兼レストランで、レストランといっても、ボロッちい海の家といった感じですが、すでに大勢の先客で混み合っていました。漁村グループが合流するまでの間、近くのハンモックをぶんどり、昼食までゴロゴロと。昼食はいたって質素なベトナムめしでしたが、西洋人とKちゃんはふつうにパクパクと平らげていました。昼食後は引き続き砂浜でフリータイム。といっても木陰にいないとぶっ倒れそうな暑さです。灼熱の砂浜でうっかりサンダルが脱げようものなら、しばらくはビッコをひかなくてはいけませんでした。そんな中でもビーチでのびのびとはしゃいでいる西洋人。日焼けウェルカムな姿勢にあらためて驚異です。目の前の海は、遠浅の砂地でさっきよりは透明度は高そうですが、シュノーケルで体力的にも精神的にもすっかり満足してしまっていました。それでも気力でくりだしましたが、砂地の海はサンゴも魚も影も薄く、海の中でいちゃつくカップルに退散をよぎなくされたのでした。
ダナンの町並み。 なぞの巨大仏像。 広大なミーケビーチは人がほとんどいませんでした。
翌日はホテルをチェックアウト。Kちゃんはその日の晩に帰国するというので、早めにダナンを後にすることに。ベトナム国内線は平気で１〜２時間遅れたり、欠航したりするので、乗り継ぎ時間としては十分でしたが、さらに１本早い便を予約していました。そのため、あまり足を延ばすこともできないので、ダナンの街をウロウロすることにしましたが、ほとんど見どころもなく、クーラーのきいたタクシーに逃げ込み、あても無く放浪しました。そうして運ちゃんに降ろされたところは「地球の歩き方」にも載っていない、地元の人達で賑わうとあるお寺。ダナンの湾の小高い丘に立つ立派な寺院で、日本でもおなじみの巨大な大仏や彫像にこれまでになく食い付くKちゃんとBさんです。最後に、思いきって五行山まで足を延ばそうとしたところでタイムアウト。
Bさん、ツキノワグマになる。 その証拠のドM写真。 最後のほたる食堂。
国内線は欠航も遅延もなく予定通りにハノイに到着。深夜の国際線までの時間がずいぶんと余ってしまいました。そこで、いったん空港をでてハノイ郊外の「ほたる食堂」で時間を潰すことに。馴染みの食堂で旅の緊張もほぐれ、ホッと一息。旅の終わりを惜しんだのでした。